最初に断っておくが、これはウエイトトレーニングを否定するための記事ではない。
物理と身体システムの話だ。
そして厳密にはパワーを上げるのではなく、“伝える力”を上げる方法になる。
私はラグビー、アメフト、サッカーと多くのコンタクトスポーツのチームトレーナーをしてきたし、自身も日本拳法という格闘技を選手として現役で鍛錬している中で痛感してきた話でもある。

コンタクトスポーツにおいてウエイトトレーニングをすることは一般的になってきているし、特に西洋生まれのスポーツでは、しない方があり得ないというスタンスであることも多い。
だが実際にその競技の中に入っていると、ウエイトを上げられる重量と実際のコンタクトの強さは必ずしも比例しないこともまた常識だ。
そして選手間でも、指導者間でも、なぜかSNS上の素人間でも、ウエイトトレーニングの賛否で対立が起こる。
今回はウエイトの是非を考える記事ではないのでこの辺にして本題に移ろうと思う。
筋トレをしない、というと語弊があるが今の筋肉量のままで伝える力を増やせないかを考えてみよう。
伝える力とは全身から生み出された力が物体(ヒトやモノ)に与えたエネルギーの量のことだ。
例えば壁を押す動作を考えてみる。

強く壁を押そうとしたらどうするだろうか?
まずほとんどの人が試みるのは肘を曲げて押そうとすることだろう。

しかしこれでは腕力以上の力を伝えることはできない。
そこでさらに体重をかけたりもするかもしれない。

だがこの方法では体重以上の力を加えることができない。
ここで使いたい力の一つは、脚の力だ。
どうすれば脚の力を壁に伝えられるのだろうか。

例えば骨模型を持ってきて、同じ姿勢を作って脚で地面を押すようにしてみる。
しかし手の部分に力は伝わっていない。

当たり前だが(笑)
では人が地面を蹴ると壁を押す力が増えるのはなぜだろう。
その答えの一つは、骨模型にはない筋膜や靭帯といった軟部組織が力を伝達してくれているからだ。
これらの”軟部組織と骨”という剛体が互いに釣り合っていることでエネルギーが末端から末端へと伝わっていく。
これをテンセグリティという。
つまり筋、筋膜を含めた軟部組織の張力と骨配列を含めた全身が釣り合った状態になっているからこそ、力を発揮したい部位(今回なら手)から離れた部位から力を伝えることができるのだ。
詳しくはこちらの記事でも解説している👇
https://note.com/takaya9/n/n6ec5475ccc21
上述の壁を押す動作で簡単な例を考えてみると、脚で地面を押したときに腰が反っているとそこで地面を蹴ったエネルギーは途切れてしまう。

他にもエネルギーが途切れるポイントは無数にあり、膝、股関節、肩、肘など大きな関節はもちろん、全身の筋膜バランスなどによっても左右される。
一言で言えば、『全身の力が一点に集約』されることがポイントになる。
多くの選手たちで共通のエネルギーロスしやすいポイントを最後にまとめてみる。
①腰部
現代的には「体幹」や「反り腰」がキーワードとなる。昔の日本では『肚』や『足腰の腰』のことになる(※これは西洋医学的な腹や腰椎のことではない)。
②肋骨
肋骨が本来の柔らかさを持っているとたわみ、ばねのように弾力がある。
現代では呼吸が浅くなり自律神経も乱れ、常に気を張っている人が多く、固まった肋骨になっている。
以前書いたコラムも参考に👇
③肩甲骨
長時間座ってパソコンや勉強が多いため、腕を肩より上に上げることが減ってしまい、肩甲骨が固まっている人がほとんど。理想的な肩甲骨は肋骨の上をスルスルと滑らかに動くことができる。
④股関節
膝を中心に歩いたり動作をするようになり、股関節の動きが制限されている人が多い。膝が主導となっている人が股関節を感じられるようになると重心が上がった感覚になる。
⑤足・手
末端となる足と手。足は捻挫などの既往や靴、インソールの影響で足の骨が固まっていたり足の指が動かなくなっている。手は携帯やパソコン作業ばかりで手の根元が固まっていることでエネルギーをロスしている。
それぞれの簡単なチェックとセルフケアを紹介する。
ただ、これらはあくまでもケアであり、その先に強化がある。
強化フェイズは競技と一人一人の身体状況によって個別性が高いため、興味がある人はぜひ一度パーソナルを受けてみてほしい。
筋肉量だけが、パワーを上げる方法ではない。
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