頭を使って上手くなる

もっと上手くなりたい、強くなりたい、そう考えてパーソナルトレーニングに来てくれる選手は多い。

そのような選手たちに共通するのは、『考えすぎ』によって伸び悩んでいることだ。

考えることは悪いことではない。
だが頭の使い方を間違えると競技スキルや成績は伸びないどころか落ちてしまうことすらある。

なぜそんなことになってしまうのだろうか。
そしてどのように頭を使えば上手くなれるのか、考えていきたい。

①下手になる頭の使い方

一番良くない頭の使い方は、
身体を全てコントロールして動かそうとすることだ。

「股関節はこう動かそう」

「身体の開きを抑えよう」

「腰を反らないようにしよう」

「腕だけで投げないようにしよう」

トレーナーや指導者にそう言われることも多いだろう。

だがそれを競技でやろうとすると身体はむしろぎこちない動きになる。

専門用語では「インターナルフォーカス」と「エクスターナルフォーカス」という。

インターナルフォーカスとは、自分の内側に意識を向けることで、
エクスターナルフォーカスとは、自分の外側に意識を向けることだ。

例えで挙げた先ほどの例の
「股関節はこう動かそう」
「身体の開きを抑えよう」
「腰を反らないようにしよう」
「腕だけで投げないようにしよう」
これらはすべてインターナルフォーカスになる。

そして厄介なことに、インターナルフォーカスでは競技パフォーマンスは低下する。

その理由は長くなるので今回は割愛するが、簡単に言えばインターナルフォーカスでは全身の(その時意識を向けていない部位の)協調性が落ちてしまうのだ。

②上手になる頭の使い方

では、いったいどう頭を使えば上手になっていくのだろうか。

ヒントは、意識しなくても動いてくれる身体を信じて任せる練習をすることだ。

私たちの身体は機械ではない。

肘をこう動かして、肩はこう、腰はこう、膝はこう、
と1つ1つ意識をしたことが同時に同じ精度で足し算されるわけではない。

だから前述の通り、インターナルフォーカスではパフォーマンスが落ちるのだ。

エクスターナルフォーカスとは、
たとえばバスケのフリースローで、手からボールが離れるポイントからリングまでの放物線を意識したり、
ダーツで、手から中心に当たるまでの軌跡を意識することだ。

そうすると不思議なことに全身はその軌道に合うように勝手に調整してくれる。

しかも面白いことに、
エクスターナルフォーカスで行った動きを関節1つ1つを詳細に分析すると、
レベルが高い選手の方が毎回違う角度や速度で動いていることが分かっている。

裏を返せばレベルの低い選手ほど毎回同じ動きでできているのだ。

しかし、フリースローの成功率やダーツの得点は後者の方が低い。

私たちは直観的に、全く同じ動作を繰り返せた方が成功率が高くなると思ってしまうが、実際はそうではない。

「こう意識しよう」と考える私たちの脳より、勝手に動く身体の方が優秀なのだ。

だがここで1つの問題が浮上する。

多くの人は、勝手に動く身体に任せられないのだ。

すぐに「前ももの力を抜こう」「膝の位置が悪いな」とインターナルフォーカスになってしまう。

意識して何も考えずに動く、という感覚が分からないと言う。

でも実は誰でもやっている。

例えば歩くとき。
右足を出して同時に左足を前に出して、と考えている人はいないはずだ。

きっと音楽を聴いたり、友人と会話したり、携帯を見ながら(良くないことだが)、歩くことができるだろう。

それによって「歩く」というパフォーマンスは落ちるかといえば、むしろ高いパフォーマンスになっている。

逆に足と手の振り方を“意識して”歩いてみてほしい。
きっとすごくぎこちなくなる。

これが頭を使って下手になる練習そのものだ。

ではなぜ歩く動作は意識せずにできて、競技動作は難しいのか。

実は難しくない。

その練習をしていないだけだ。

歩く動作は日常に溶け込みすぎていて、それをパフォーマンスを認識していないからこそ、無意識に他の動作をしながらやる練習が常時行われている。

だから競技練習もそうすればいい。

私は日本拳法という格闘技をやっている。
格闘技がそもそも初めてだったが、道場に入って2年弱で弐段まで取ることができた。

今振り返ると、私はひたすら「闘う」ことを無意識にできるように練習していたと思う。

道場内の仲間はほぼ全員が格闘技経験者で、格上だった。
だから自分がこう動こう、ということより先にまず反応し続ける必要があった。

考えていたらすぐに負けてしまうから。

とにかく無になって相手が動こうとする初動を見つけて躱す(かわす)なり捌く(さばく)なりしなければならない。

つまりエクスターナルフォーカスだ。

しかもそこにカウンターを合わせたり、隙をついて攻撃をしたりしなければならない。

ここも考えている暇などない。

こうして私にとっては格闘技という思考の暇すらもらえない競技(本当は武道だがここではあえて競技と言わせてもらう)に出会えたことは、自分の身体を信じて任せることの練習にはもってこいだった。

だが格闘技じゃなくても同じなのだ。

野球でも、バレーボールでも、サッカーでもバスケでも、

「こう動かそう」など本来している暇はない。

ではインターナルフォーカスは悪者だろうか。

最後に、インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスの使い分けについて考えていこう。

③頭と身体をつなげて信じて任せる

パフォーマンスが落ちてしまうインターナルフォーカスはどう使うべきなのか。

無意識の動きを修正するときに使うのだ。

例えばビデオで自分の動きを見たとき、
・思っているよりも身体の開きが早いな
・腰が反ってるな
・足幅が狭いな
などと感じたとする。

それは、身体イメージと実際の動作とのギャップを意味する。

つまり「自分はこう動いているつもり」と「身体の反応」にズレがあるということだ。

これを修正するときにインターナルフォーカスが使える。

このズレの原因は
・関節の硬さ
・関節の動きやすさ(適合性)
・脳内イメージのズレ
など多岐にわたるが、多くの場合インターナルフォーカスから修正していける。

例えば野球などの投球動作で思ったより身体の開きが早い場合。

意識だけで身体の開きを抑えようとしても本気で投げる時には戻るだろう。
その原因が股関節の適合性にある場合。

股関節の感覚を高めるトレーニングでインターナルフォーカスしてみる。

すると左の股関節がこの角度だけいきにくいな。
などと発見することができる。

それが分かればその角度の動きを良くするまではインターナルフォーカスで丁寧に繰り返す。

そして実際に投げる時はエクスターナルフォーカスで、例えばキャッチャーミットだけに意識を向けて投げてそれを動画で確認する。

ここで身体の開きが変わっていれば左股関節の適合性の問題で開きが早くなっていたと分かる。

スキル練習でもインターナルフォーカスを使う方法がある。

身につけたいスキルをゆっくりやってみるのだ。

多くのスポーツ動作は高速で行われる。

だから練習でもいきなり高速でやろうとする。

するとどこでエラーが起きているか分からないのだ。

だから連続写真のようにゆっくりやってみる。

するとおのずとインターナルフォーカスになる。

次はどこを動かすのか?どの方向に動くのか?

その中で自分が意識していない部分が出てきたりする。

最初はそこを意識してイメージ通りに動かしてみる。

すると初めての感覚に出会うのだ。
「あ、ここを動かすとこんな感覚なのか。」

その感覚が大事だと思っている。

身体は、一度経験した動きなら無意識にできるようになる。

もちろんこれまでの動きになってしまう時もある。
だが一度経験した後なら、違いに気付けるようになる。

これは違ったな、と。

あとは実践でひたすら身体に任せるのだ。
ここで意識して新しい動きをしようとしてはいけない

一度感覚を経験したら、あとは自然に動くまで信じ切る。

多分これが、「身体を思い通りに動かそう」と思っている人ほどできない。

一度感覚を入れてしまえば、あとは無意識の中にその動きはインプットされている。

それを信じて任せるのだ。

④エクスターナルフォーカスのその先へ

一応、現代科学の研究上はエクスターナルフォーカスで止まっているが、さらにその先がある。

身体外部に意識を向けるのではなく、どこにも意識を向けない、のだ。

どこにも意識を向けないとは、つまりすべてを意識している、と同義である。

アスリートであれば「ゾーンに入る」という言葉を聞いたことがあると思う。

ボールが止まって見えた、味方も敵も動きが手に取るようにわかった、などの感覚を味わうゾーン。

ゾーンは脳波の研究などもあり現代科学でもある程度までは解明されてきているが、今回はその話とは似ているが少し違う。

意図的に思考を消す、という練習ができるのだ。

人は何かに意識を向けると他への意識が弱くなる。だから思考そのものを手放す。

すると身体は勝手に動き、状況を勝手に判断し、勝手に最善手を打ってくれるようになる。

この話はちゃんとしようとするとすごく長くなり、感覚的な話にもなってしまうので、また別の機会にでも。

まとめ

いかがだっただろうか。

頭を使って上手くなろうとするときの一番の壁は、身体を思い通りに動かそうとしてしまうことだ。

このインターナルフォーカスを抑えるための手軽な手法が、エクスターナルフォーカスとなる。
つまり、身体外部であるボールや味方や敵、ゴールに意識を向けることだ。

だがこれもまだ途中。

もっともっと先に、身体を100%信じて任せる。
我々の脳が意識できる量は些細なものでしかない。

それよりも膨大な情報を持っている無意識に完全に任せること。

taoのパーソナルではその辺りも話も必要に応じて必要な選手たちには伝えている。

もし興味がある選手は、ぜひパーソナルトレーニングも受けてみてほしいと思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。