記録を伸ばしたい、球速を上げたい、もっと強くなりたい。
あらゆるパフォーマンスアップの道のりとして、筋肉量を増やすことや筋肉の柔軟性を高めることを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
それは間違っていない。
が、筋肉は無数にある身体の要素のうちの、たった1つだ。
人の身体には筋肉以外にも、
骨、皮膚、血液(血流)、神経、内臓、脳、腱(靭帯含む)など目に見えるだけでこれ以上に多くの組織が存在する。
これらが、パフォーマンスアップに関係ないと言い切れるだろうか。
答えはNoだ。
絶対関係している。
骨の位置を少し修正するだけで筋力(厳密には出力)は上がるし、
皮膚を動かすだけで可動域は増えるし、
血流を良くするだけで可動域も出力も増える。
逆に言えば、筋肉以外の要素を無視した筋肉のみのアプローチは非効率的かつケガの温床になるということだ。
だがほとんどのアスリートはトレーニングと言えば筋トレとストレッチを思い浮かべるのではないか。
これらは筋肉へのアプローチだ。
ケガをしても「身体が硬いから」や「筋力が弱いから」と言われた経験がある選手も多いと思う。
これらも筋肉が原因としている考え方が根底にある。
このように、現代は筋肉がスポーツにおいて過度に重要視されている。
これを筋肉唯一主義と勝手に名付けた。
ケアするのも筋肉、トレーニングするのも筋肉。
だが、現実問題としてこれではほとんどのことは解決しない。
途中までは筋トレで成績が伸びた人もいるだろう。だがいつからか成績の伸びが止まってきていないだろうか。
ちょっと筋肉をほぐしたら痛みが和らいだ人もいるだろう。だがまだその痛みは違和感として残っていないだろうか。
人の身体はどこまでも複雑で、いまだに分かっていないことがたくさんあるのに、その身体で起こすパフォーマンスが筋肉という1要素だけでどこまで変えられるのだろう。
そこに疑問を持てた人は、筋肉唯一主義を卒業する準備が整ったと言える。
筋肉が悪いわけじゃない、不要なわけでもない。
ただ1つの要素であり、その重要度も他の要素と等しいだけだ。
という前提に立てた人はぜひ読み進めてほしい。
①骨を使う
骨の感覚を養い、動かせるようになるメリットは大きく2つある。
1つは床反力をロスなくもらえるようになること。
走ったり方向転換したり、投げたり打ったり、突きや蹴り技を出したり。
地面に足がついている競技ではまず間違いなく床反力を使ってプレーしている。
やや専門的な話になるが、人は前に進むとき、地面を後ろ方向に蹴っている。
そこで生まれる反力を使って前に進んでいるのだ。
これを筋肉で蹴ろうとすると、地面から返ってきた反力はその多くが筋肉で吸収されてしまう。
柔らかいボールを地面に落としてもバウンドしないのは柔らかいボールが反力を吸収してしまうからだ。
つまり、反力は硬いものの方がより効率的に力を戻してくれる。
そして、骨はどれだけ力を込めた筋肉より硬い。
だから骨を使えることで反力を効率的に身体を動かすことに使える。
骨の感覚がなければ、ほとんどの床からの反力は筋肉で吸収されている。それが過度になれば筋を痛めることになる。
ランナー膝、オスグッド、シンスプリントなどもその代表だ。
だから筋肉ではなく骨の感覚を育てよう。
メリットの2つ目はアウターマッスルの抑制だ。
骨を動かそうとする感覚と、筋肉で力を出そうとする感覚は全く異なる。
骨の感覚が鋭くなるとより出力がいらなくなる。
厳密には外側の筋肉の依存度が下がる。
骨の周りには多くの小さな筋肉が存在する。これらは収縮する感覚が分かりにくく、筋肉を動かそうとしても働きにくい。
しかし骨を動かそうとすることでいわゆるインナーマッスルが働きやすくなり、小さな出力で運動が可能になっていく。
これは対人競技が分かりやすい。バスケで背中や肩同士を合わせて押し合いをするような場面を考えてみる。

コンタクトをしながらでもボールを失わない | 公益財団法人日本バスケットボール協会から画像引用
このとき脚や肩の筋肉で押している選手と、背骨から押している選手では、全く違う力が生まれる。
骨の操作が上手くなれば、体格差をひっくり返すことも可能になる。
それを「あいつは体幹が強い」とまた筋肉唯一主義に戻されるのがほとんどだが、そうではない。
そもそものシステムが違うのだ。
いくら体幹を鍛えても体格差をひっくり返せるようにはならない。
これが、骨を使えるようになる2つのメリットだ。詳細はぜひ直接スタジオに来て味わってほしい。
②皮膚を柔らかく保つ
皮膚に関しては福井勉先生が様々な書籍や論文を書いてくださっているので専門的に知りたい方はそちらをご参照ください。
手の甲の皮膚をつまんでみてほしい。薄くつまめると思う。
では膝の外側や内側も同じようにつまんでみてほしい。きっと硬くて太くしかつまめない、もしくはつまむことができないという人もいるかもしれない。
皮膚は、物理的な圧迫があると硬くなっていく。
サポーター、ソックス、椅子やテーブルに当たる部位など日常で常に圧迫を受けるところが硬くなる。
選手が日常でできることとしては、全身の皮膚をつまんだり動かしたりしてあげることだ。
これはお風呂のときがやりやすいが、痛みや硬さが気になる部位は1日の中でなるべくたくさん触ってあげよう。
それだけで少しずつ柔らかくなるし、動かしやすくなるのが実感できる。
③血流をよくする
血流にはいくつかポイントがあるが、1番はお腹だと考えている。
お腹には腹大動脈という大きな血管がある。
内臓や腹部の筋肉の硬さによって全身の血流が影響を受ける。
だからお腹はとにかく柔らかく保ってほしい。
指で優しくお腹を押し込んで、痛みや違和感があるところは丁寧に呼吸を繰り返して硬さを取ったり、タオルを丸めてうつ伏せで寝てみたり。
できる人はサッカーボールやバレーボールをお腹においてうつ伏せで寝ても痛くない状態を目指してみよう。

まだまだ筋肉以外の組織はたくさんあるが、代表的なところは紹介できた。
これらの物質的な要素に加えて、スポーツでは「意識」の状態や操作が欠かせない。
今回の記事を通して、筋肉以外の要素について少しでも考えを拡げてもらえたら、なによりだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
